【リミッターNG】マスタリングで音圧を上げたいなら、2つの原因と解決策
最終更新日:2024/11/09
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マスタートラックに、がむしゃらなリミッターを使っても音圧は上がりません。
マスタリング最終段階ではもちろんリミッターを使いますが、それまでのミキシングが堅牢にできていないと、リミッターを使っても、ただ歪んだ音量の大きいトラックになってしまいます。
今回は「音圧を上げる」という最終目標に向け、解決すべきいくつかの問題について解説していきます。 具体的にはマスタリング前までの工程、つまりミキシングを堅牢にするための基本的な知識に加えて、音圧を下げる要因になる落とし穴を一つずつ潰していきましょう!
それでは早速見ていきましょう!
目次
音圧が上がらない原因① 不要な音域が残っている
1つ目の音圧が上がらない原因として、ミックス段階で各トラックの不要な音域が処理できていない可能性が考えられます。
きちんと処理できていないトラック同士が重なると、特定の音域に大きな音が集まったマスタートラックになります。この大きな部分がリミッターのスレッショルドにひっかかって音圧が上手く上がらない状態を作り出してしまうのです。
ミックス段階に戻って、音域をEQでしっかり調整
これを解決するためには、ミックス段階に戻ってきちんとEQを使った音域整理をしておきましょう。
ミックス段階で使うEQは基本的になんでもOKですが、必ずリニアフェーズモードが使えるものを選ぶようにしてください。普通のEQでカットを行うと、フェーズ問題を引き起こすことがあります。
1つ目の原因への解決策・ミックス段階に戻って音域整理
どこが不要か、まずはチェック
どこが不要なのかをしっかり把握した上で、EQを使って削っていきましょう。
どのようなメーターでも良いですが、Excite AudioのVision 4Xを使うと不要な音域が一発で視覚化できます。
下の例では500Hzから始まるCメジャーコードをシンセで鳴らしていますが、それより低音の赤枠部分に不要な音域が見つかりました。
見つけた不要な音域をEQでカット
これを前述のように、必ずリニアフェーズEQを使ってカットします。簡単ですね。
できるだけゆるやかなカーブを使う方が自然に仕上がって◎ですが、目標となる仕上がりが明確で、必要な場合は急なカーブを使うのも全然OK。
高音域のハッシュネスは、”逆に”要注意
ハイハットやシェイカー、ボーカルの空気感、リバーブの反響、ノイズなどが該当する高音域部分。比較的楽器の重なりが少ないため、この音域が音圧アップの邪魔をすることは少ないです。
しかし、逆に高音域は音圧を上げる際に、予期せず音量が上がって不快なキンキン音を作ってしまう原因となります。
特に低音がカットされているスマホスピーカーでは更にそれが強調されるので注意が必要です。
手間はかかりますが、スマホスピーカーで確認するか、Mixcheckerのようなプラグインで環境を再現しつつ繰り返しチェックしましょう。
中音域ではどちらを優先するか意識する
ギターやピアノとボーカルは音域が重なることが多いですが、その場合どちらを聞かせるか意識しましょう。
例えばギター単体で聴くとミドルが削れたいわゆるドンシャリはペラペラしたイメージになりますが、ボーカルがあるトラックを全体として聴くと結果的にバランスが良い場合が多いです。
次項のマルチバンドコンプや専用のプラグインでダッキングすることで、ボーカルが入ってるときだけ中音域を抑えることも可能です。こちらも後ほど解説します。
トラック同士で重なる中音域と低音域は、ダッキングで解決
キックとベースや、ボーカルとピアノなど、トラック同士で重なる音域はダッキングというミックステクニックを使って解決します。
ダッキングとは、簡単にいうと
- ・キックが鳴っている瞬間だけベースを抑える
- ・ボーカルが歌ってる時だけピアノを下げる
という処理。マルチバンドコンプレッサーや、ダッキング専用のプラグインを使って行うのが一般的です。
なぜ中音域・低音域にEQを使わないの?
低音域はトラックにエネルギーを与える非常に重要な周波数帯。
EQを使った音域処理は、基本的にはずっと削り続けるため、特定の低音域をEQでカットするとトラックのパワーを損ないます。必要な瞬間だけ削るのと、ずっと削られ続けるのでは、トラックが持つエネルギーの差は歴然ですよね。
特に低音域の主成分は、ドラムのキックとベース。EQで処理する場合、優先しなかった方がペラペラになってしまいます。
同じように、ボーカルと重なるギターやピアノにもダッキングは応用可能。ボーカルが鳴っている時だけ他の楽器の音量を下げるのもよく使われるテクニックです。
音圧が上がらない原因② 各トラックのダイナミック調整が不十分
2つ目の原因として考えられるのは、各トラックのダイナミクス(音量)の調節がしっかりできていない可能性です。
各トラックに突発的に大きくなる音量が残ったままだと、マスタートラックとしてまとめた際にそのピークはさらに跳ね上がります。リミッターはこのピークを基準に動作するので、音圧が上がるどころかミックスバランスが崩れてしまうこともあります。
特に、大きな音が集まるサビの頭などでこの現象がよく起こります。リミッターを使ったのに、なぜか音量が大きいはずの部分でガクッと圧縮されてしまうのはこれが原因の可能性が高いです。
2つ目の原因への解決策・コンプで音を整えてあげよう
コンプレッサーを全部のトラックに使っちゃえ!
音の大きさを整えるのには、コンプレッサーを使います。
基本的には、音量差を感じるトラックにだけ使えばOKです。どのトラックに使えば良いかわからない時は、一旦コンプを適応したトラックをバウンスして比較してみると違いがわかって良いと思います。
ここでの目的は、音量差を抑えることなので色付けのないデジタルコンプで良いと思いますが、合わせてキャラクターをつけたい場合にはFETや真空管系のコンプも試してみると良いでしょう。
なお、抑揚の激しいボーカルは、コンプを使う前にMAutoVolmeなどを使ってある程度音量を揃えておくほうが、コンプレッサーが綺麗にかかるのでおすすめです。
コンプレッサーなしで、プロ品質のミックスをすることは不可能
今回は音量差を抑える目的でコンプレッサーを紹介しましたが、ミックスにおいてコンプレッサーは必要不可欠なプラグイン。
shadow hillsなどの”バスコンプ”と呼ばれるコンプは、マスタリングの前半に使ってトラック同士をまとめるのに使う、プロのひみつ道具。
他のFXより効果がわかりにくいので、最初は難しく感じますが、プロ品質を求めるならコンプは必須教科です。少しずつ、いろいろなコンプを試しながら慣れていくと良いと思います。
いよいよマスタートラックの音圧を上げる
大きく2つの問題を解決したできたら、いよいよマスタートラックにリミッターを使っていきましょう。
マスタリングでは、マスターバスの最後に1つだけリミッターを置いて安全装置のように使います。ただ音圧を上げたい場合は、マルチコンプとリミッターの2段階で音圧調整するのがおすすめです。
まずはマルチコンプで周波数帯ごとに圧縮
まずはマルチコンプレッサーを使って、低音や中音域など音域別に圧縮していきます。この工程は音圧を上げる前に、大きすぎる音を抑える役割をします。
通常のコンプではなく、マルチバンドコンプレッサーを使う理由は、圧縮を最低限の音域に抑えるためです。
やりすぎると曲を通しての強弱が減って、平坦なサウンドになってしまいますが、適度に圧縮することで音圧アップの下準備になります。
リミッターで音圧アップ!!!!!!
マスタートラックの最後に挿入したリミッターは、Outputを必ず0dBより小さい数値に設定しておきましょう。配信プラットフォームへ載せる前提であれば-1.0dB、それ以外の場合であれば-0.1~ -0.2dBあたりが◎
リミッターによって、
- ・音量とラウドネスどちらを基準に圧縮するか
- ・圧縮が開始されるまでの速度
- ・ハーモニックディストーションの量
などパラメーターの種類や数が異なります。
シンプルなリミッターであればMastering the mixのLIMITERがおすすめです。実は音圧を上げすぎると、Spotifyなどでは逆に小さい音で配信されてしまうことがあります。
このLIMITERはそういう部分も配慮しつつ、エネルギーとパンチを与えることができる凄腕リミッターなので、筆者も愛用しています。
マスタリング全体を通しておすすめなのはiZotope
音圧だけでなく、音の広がりや、ミックス段階より慎重なEQ調整やコンプによる圧縮をする過程であるマスタリング。
iZotopeのOzoneシリーズは、自分のトラックを聴かせるだけで、こういった繊細なEQやコンプ、そしてジャンルに適切な音圧などを設定してくれる非常に優秀なプラグイン。
同じくiZotopeのAudioLensを連携させると、AppleMusicやSpotifyなどで自分が近づけたいトラックをリファレンスとして使うことができます。
マスタリングは慣れると楽しい作業ですが、
「音圧とかEQとか考えずに、創作に専念したい」という方には、OzoneとAudiolensの組み合わせはとてもおすすめです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は音圧を上げる際に解決するべき2つの落とし穴と、リミッターを使った音圧アップの流れをご紹介しました。
ミックスについてより詳しく学びたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。
ではまた次回!